12/15に、友だちと一緒に映画を観て喋るという会をやりました!
「ブルーバレンタイン」という、恋愛映画の金字塔と呼ばれる作品を観ました。

集まったメンバーは以下の通りです。
せっかくなので文字起こしをしました。
お暇でしたらお読みくださいな。
ネタバレしまくってますのでご注意を~!

縹けいか(以下「け」)
ナカオボウシ(以下「な」)
萩原アマネ(以下「あ」)
炭谷一郎(以下「す」)

け「時系列がよくわかんなかった」
あ「いきなり過去との交差が始まったもんね」
け「最初、若い頃のディーン見ても全く別人だと思った。ハゲ散らかしてて……」
す「作品に対して好意的な解釈をするなら、シンディがそういう男を選んでるって見方もできますよね」
け「なるほど」
す「あとでちょっと話しますけど、人物の容姿の作り方にはけっこうこだわっている映画ではあるんですよね」

あ「2010年の映画だっけ? シナリオとかの話にはなってくと思うんだけど、なんか撮り方がホームドラマっぽかったじゃないですか。常になんかこう、揺れてませんでした? あれはすごくなかった? あれは普通なのかな、インディーズだからなのかな。」
け「ふつうになんか8ミリビデオっぽい感じでしたよね」
あ「なんかあれ、すげー面白れーなーって思いました」
け「ていうか過去のほうは8ミリビデオかなと思ったんですけど」
す「過去はフィルムで撮ってて、現代のほうはデジカメで撮っているんです。過去と現代で、機材が違う」
け「ですよね」
あ「そっか。そういうことなんだ」
す「ただどちらのほうも、手で撮っているはず。監督はドキュメンタリーっぽい感じでリアリティを出したかったんじゃないですかね」
あ「そうそう、それを言いたかったんです! 常に画面が揺れてて、なんか気持ち悪いんだけど、リアリティがすごかった」
す「突き詰めて考えると、人間の頭だって固定じゃないですからね。細かく揺れてるはず」
あ「他の映画と比べてみると、そういう演出がいいなーって思いました」

け「すごい昔、8ミリビデオの映画のばっかり観てたことがあるんです。それと映像の入れ方が近かったというか……なんか8ミリビデオを使いたい人っていうのは、多分ああいう『自分で撮りました感』がちょっと欲しいのかなって思ったりします(笑)。フィルムの良さっていうか」
す「現代と過去で描かれる感情が全然違う方向だから、その描き分けっていうのは絶対に狙っていると思います……現代のほうとか、観ていたくない映像しかないから(笑)。撮影方法には本当にこだわっていると思います。監督が、これが処女長編作なんですけど、企画自体は12年以上前から抱えてたみたいで」
け「すっげー」
あ「12年!?」
す「その間、ドキュメンタリーフィルムとかを撮って糊口をしのいでいたらしいので、ドキュメンタリーのやり方が染みついているって側面はあるかもですね。撮影については」
な「ホームドラマ感というか、過去のフィルムの質感が良い感じにノスタルジックな雰囲気を観る側に与えているっていうのが、効果的になっているって感じました」
す「そうですよねぇ」
な「対比がすごいですよね。構造のとがり具合が、自分は気になりましたね」

け「でもなんで奥さんは、ディーンに限界だったんですかね?」
す「そこはけっこう論争になるポイントですよね」
け「いいヤツじゃん! フランキーは自分の子どもじゃないのにあんなにかわいがってて、『俺は殴らないぞ』って宣言してるし……まぁ最後に医者殴っちゃうけど……。いや、わからないです、フランキーが生まれてから我々が知らない空白の期間に何かがあったのかもしれないけど……ハゲたとか……」
みんな「(笑)」
す「ハリウッドでもトップクラスのイケメンを、あんだけ太らせてハゲさせるとか……」
け「ハゲちらかしてる」
す「しかもダッサイトレーナーを着せるっていう。なにあれ? どこで売ってんのってレベル」
け「そうか……そういうことなのかな。奥さんはカッコイイあのディーンが好きだったのかな。カッコイイじゃん、昔は。歌も歌えるし。で、ラブホでも『あなたは歌も歌えるし』みたいなことも言ってたじゃん。『もうやらないの? あなたは才能もあるんだから活かせば?』って。そういう、才能があって輝いているあの人が好きだったのかなぁ。まぁ、それ以外にもいろいろあるとは思うんだけど(笑)」
す「オープニングのところで、ピアニカ使って遊んでいたりはするから、やってなくはないかなと思うんですけど……どうなんだろう。シンディがそれを喜んでいないのはたしかですよね」
な「シンディが『女々しいのよ』って言うじゃないですか。そこが、結婚して新たに見えてきた側面なんじゃないですかね」
け「わたしのこと追い過ぎよ、って」
す「『私の方が男らしいわよ!』っていう、長渕剛を発狂させそうなセリフもありましたよね」
な「一言で言っちゃうと、倦怠期ってことになるんじゃないかと思うんですけど……なんか、女心ってわかんないってところがありますからね(笑)」

す「娘とのかかわりにかんして言うと、ホント100点のパパでしたよね」
な「うん。良いお父さんでしたよね」
す「犬が死んじゃった時に、娘には『彼はハリウッドに行ったんだよ。イケメン犬だったろ?』って言ってうまくはぐらかそうとしたり」
け「あれはすごい良かった」
す「で、子どもがいないところでは泣いてたりして。あそこを観ると、パパとしてはホントに100点だったなーと」
け「ていうか、良いパパですよね」
す「ただ、旦那としてどうかというと……」
け「なにがいけなかったんだろう」
す「一つ、映画観るだけだとわかりにくいところではあるんですけど、アメリカでは看護師さんってランクの高い仕事なんですって」
あ「へぇー」
け「日本とはちょっと違うんですね」
す「シンディは四年生の大学を出てるから、かなりランクが高い職位なんですね。医師の男からも引き抜きっぽい話が来てたじゃないですか。だからシンディも上昇志向のある女性だったんじゃないかと思うんですね。でもディーンは家庭に入って、娘と楽しくやれていればよかったから、ビジョンの食い違いみたいなのはあったのかも。……でも、それにしても、あんなに冷たくする?(笑)」
け「かわいそうになった(笑)」
す「乳首なめられてあんなに嫌そうな顔をする……?」
け「ね!(笑)」
な「ほんとですよね……」
す「ハリウッドのトップのイケメンに乳首舐めてもらってんねんぞ!? って思いましたよ」
け「それは関係ないんじゃないですか(笑)」
す「セックスシンボルとして、ほんとにトップクラスの人なんですよ!? この映画がきっかけで地位が確立されたっていう見方もできなくはないんですけど」
け「すげー嫌そうでしたよね。歯を食いしばってた(笑)」
す「なんであんなに嫌だったんでしょうね……アマネさんはどう思います?」
あ「なんで嫌……? ……『そこじゃないのよ』ってことなんじゃないかな?」
す「……え? セックス的な……性感的な?」
あ「『そこは感じない』って」
す「そういう意味で嫌がってたってこと!? のちのち『離婚したい』とまで言わしめる原因が乳首感じないってこと!?」
あ「女ってそういうところあるよ」
す「乳首はみんな感じるでしょ! 男でも女でも!」
あ「そこじゃないのよ! っていう」
す「過去編のクンニの時はあんなに感じまくってたのにね……絶頂だったのに」
あ「性感もだんだん変わってきたんじゃない?」
す「いやいやいやいや女子大生の頃より、年取った現代編の方が性欲高まってきてるに決まってんじゃん!」

す「なんであんなに嫌がられるんでしょうね……そこだけが、観ていてつらかったですよ」
け「最後は家追い出されるしなぁ」
あ「あれかわいそうですよね」
け「全体的にディーンがかわいそうな映画でしたね」
す「ボコボコにもされてましたしね」
あ「そうだね。あんなに殴られて、人って死なないの?」
す「まぁ死ぬでしょうね」
あ「あんなに殴られて人って死なないの? 死ぬんじゃないかなって思うんだけど」
す「けっこう死ぬんじゃないですか?」
あ「しかも相手、レスリングやってる人でしょ?」
す「床もコンクリートでしたし、かなり頭に掛かる衝撃も強いんじゃないですかね」
あ「そうだよね」
す「あのパンチが原因でディーンはハゲはじめてしまったのかもしれないですね」
あ「あれが原因か(笑)」
け「ボビーのせいじゃん!(笑)」
す「全部ボビーのせいだ」
あ「ボビーって名前も何か、強そーだしね」

す「ちょっとだけ気になったんですけど、シンディー、ボビーと再会したときに笑顔で接してたじゃないですか。あれどうなんでしょうね。洗い流せているもんなの?」
け「なんなんですかね……過去編ではもうボビーのことは好きじゃなかったわけですもんね」
す「まぁ、中出しされてますからね」
け「好きだったら、中出しされた方にいくわけですもんね。で、『これはあんたの子どもやで』って言って、結婚するわけですよね」
す「たしかに」
け「だからその時点ではディーンのことが好きだったわけですよね。だからボビーの子どもができてしまって、苦しい……みたいな」
す「そう考えると、ボビーと結婚するっていう手もなかったわけじゃないんですよね」
け「ですよね」
す「まぁ、中出しされたのが嫌でちょっと距離を置いているところに、ディーンと……全米ナンバーワンセックスシンボルと出会って、いい感じになってたって感じではあるけど」

な「ボビーと行為中に、なんか、サイテーみたいな感じの展開になったじゃないですか。あれ、なんでサイテーって感じになったんですか?」
みんな「中出しされたからですよ!」
な「あ、中出しされてたんですか!?」
す「中出しって言葉は使ってなかったですけど、ボビーが『あ~っ( ^)o(^ )』って感じで脱力感に見舞われてたじゃないですか」
け「でそのあと、トイレ行って流そうとして……まぁ流しても意味はないと思いますけどね」
す「エロゲー的な表現としては、ボビーがイッた瞬間に画面がピカピカッてフラッシュしなきゃいけないんですけどね」
け「断面図とかも入ったりして(笑)。より直接的なエロゲーだと、卵子にピュッと入るところですよ」
す「低予算映画なので、そういうCGを作る予算がなかったのかもしれないですね」
け「そんなシーン入ったら一気にギャグになりますけどね(笑)」
す「あのシーン凄い嫌でしたね……ボビーが『あー気持ち良かったー』みたいな顔してるところ……。勝手に中出しするような男だから、ボビーと結婚するっていう選択肢はなかったってことなのなのかなぁ」
な「そこしか、ボビーを嫌うような描写がなかった気がして……他に明確な理由ってあったんですかね」
す「一つ、僕が二度目の鑑賞だから思ったところかもですが……最初に、レスリングをしているボビーに会いに行った時、学校の中でもチュパチュパ求めてくるじゃないですか」
な「はいはい」
す「で、シンディーが『今はダメよ』って。下手したらボビー、校内セックスとかも求めてくるような男だったんじゃないかなって。ただのケダモノだったんですよね」
け「ただのケダモノ(笑)」
す「思い当たるのはそこくらいかな……そんなに登場シーン多くないですしね」
け「ボビーは子どもの存在知ってるんですよね、そういえば。過去編でディーンを襲う時に、『父親面する気だぜ』とか言ってたじゃないですか。てことは、自分の子どもだって知ってんだ」
す「そこ僕も気になったんです……中出ししたから思い当たってるってことかな。けど、現代編で再会したとき、『今は結婚してるの?』って答えてたりとか……」
け「ウーン……考えることを放棄したくなってきた(笑)」

す「シンディーのこと引き抜こうとしてた医師が、結局『僕と飯でも食いに行けばいいじゃん』とか言ってくるっていう……」
け「あの医師、くそったれでしたね!」
す「まずあそこで一回、『私、仕事が認められたんだと思ってました』ってシンディーは幻滅する。ああいうのって、社会で生きている女性にはわりと起こることなのかなって。男のほうもすごい悪気があるわけではなく、顔の良い女性を仕事上でひいきすることってあったりすると思うんですよね。いや、無意識にそういうことしちゃうのは結果的に悪いだろって話でもあるんですけど(笑)。でもこの医師のムカつくところは、そのあとでディーンが病院に行くシーンで、『ここで俺ちょっとかっこいいところ見せとけば、まだシンディーとワンチャンあるかもしんねー!』っていう思惑があったように見えるところです」

す「ついでに言うと、シンディーの同僚の女ってのも僕はすっごく許せなくって……。一個一個の台詞がすごい嫌なんですよ。ディーンと話し合うために外に出ていくシンディーを『洗脳されないでね』って言って送り出したりとか」
け「そうだっけ。全然気にしてなかった」
す「そのあとも、ディーンがシンディーを追いかけてまた病院に入ってきたら『彼女のこと、放っといてあげて!』って言ったりとか……。一応ディーンとシンディーの物語ってあるわけじゃないですか。ただこの女性は、シンディーからそのことを伝え聞くだけなんですよ。シンディーから愚痴られることをベースにディーン像が出来上がってるんじゃないのかと。たしかにディーンも良くないとこはあるんですけど、彼からしたら、せっかく未来ルームで燃え上がろうと思ってたのにダメになっちゃって、しかも朝起きたら勝手に帰られてるっていう……そういう心境なわけですよ(笑)」
け「しかも車にも乗っていかれてるし(笑)」
す「そうそうそう(笑)。いや、ディーンも、酒なんか飲んで行くなよって話でもあるんですけど、ただそれでもあの同僚の女のムカつきっぷりはやばい。ただ、これってけっこうあるんだろうなって思うんですね」
みんな「(しーん)」
す「(めっちゃ沈黙されてる……)あの女性のキャラ、どうですか?」
みんな「(しーん)」
す「え、なんも思ってない!?」
け「なんも思ってないです(笑)。モブとしか思ってなかった」
あ「そこしか出てないっすよね?」
す「フロントの中でしか出てこないですね」
あ「しょうがないっていう気もするよね」
な「さっき炭谷さんが言った、女の視点でしか話を聞いていないからこそ、ディーンのイメージが悪いほうへ膨らんじゃってるんだろうなっていう考え方は面白いなって思いましたね」
す「僕が前に付き合ってた女の子の話になっちゃうんですけど、『炭谷のこと友だちに話したら、別れた方がいいって言われるんだけど』って言われたことがあって。一応、彼女のバイアスを経て報告されているわけじゃないですか、彼女のコミュニティには」
け「それはあるかもしれないな。それで余計膨らむんでしょうね(笑)。女の子間のコミュニティで愚痴を言い合うじゃん。で、『アイツ最悪!』ってなるじゃん。で、最悪じゃんっていう言葉が返ってくると、愚痴を発した本人も『アイツ最悪なんや!』っていう認識が膨らんじゃうみたいな(笑)」
す「しかも、恋人のいいところってわざわざ他の人に報告しなかったりするじゃないですか。ノロケ聞かされるのって別に気持ち良くないし。けど愚痴気味なことって共有し合いたい人がわりと多いと思う。勤務先のいいところの話より、愚痴話の方が求められるってことと似てるような……。そういう女の子コミュニティの怖さみたいなのが端的ながら出ていたので、これは……と思いました」
け「そんなとこは考えてなかったですね(笑)」
な「そんな複雑なんすかね?」
け「わりとでもそこは、確かに描かれてたかもしれないけど、深読み勢……深読みするところだと思うんですよね」
す「はい」
け「そんなに描かれていないところというか」
す「そうか……。けど、そういう細かいところも拾いたくなるような映画だったと思うんですけど……」
な「考える余地がいっぱいありそうな映画ですよね」
す「脚本がガチッと決まってたんじゃなくって、それぞれの役者による作り込みというのもけっこうあったみたいで。脚本は60回以上書き直してるらしいんですね。で、監督は脚本を映像化するっていう情熱があんまりなかったみたいで、特に主演の二人には任せている部分が多いみたいですね」

す「で、またいい話なのが、制作資金が集まっていないうちから、主演の二人はこの映画に出ることを熱望してたっていう」
あ「へぇー」
す「制作開始時にはもうけっこう売れっ子になっていたにもかかわらず、この映画のためにハゲたり」
け「ハゲちらかしたり(笑)」
す「シンディー役のミシェル・ウィリアムズのほうもちょっと太ってたし」

あ「俺は男だからあんまりわかんないんだけど、女の子が子ども出来た時の感覚って、『あー出来ちゃったヤバイ!!』みたいなふうに描かれてるじゃないですか。あれってみんなそうなのかな?」
け「あれは単純に、大学生だからじゃないですか?」
あ「大学生だからか」
け「ていうか別れた男の子どもだってわかってるわけじゃん」
あ「いや、そうなんですけど……」
け「あれがディーンと長く付き合ってて、『もうそろそろだね』みたいな雰囲気だったら、ちょっと嬉しいんじゃない?」
あ「そこがやっぱり現代なんだなってところがあって……なんていうか、子どもができるってことが嬉しくはないのかなっていう。ほら、高校生とかだったら『できたらやべーじゃん』っていうのがあるのはわかるんだけど……男のことが好きだったなら、一瞬でもうれしさっていうのはないのかなっていう。できたのがわかった瞬間に、もう『やべー!』みたいな感じになってるじゃないですか」
す「好きだったのが過去のことだったら、もう嫌悪感に切り替わっちゃってるんじゃないですかね」
け「ムカついたわけでしょ、中出しされて。ファックって言うぐらいだし(笑)。ファックっていうのがもう頭の中に入ってるわけ。そのファック野郎に孕まされた~っていうわけでしょ。だからたぶん彼女的に、あの時点ではもうレイプされたぐらいの勢いなんじゃない?」
あ「あー、そういうことか。なるほど」
け「むしろなんか個人的には、堕ろせないんだなっていうのが不思議でしたけどね……こういう言い方は命に対して、アレかもしれないけど。そこで堕ろしちゃったらとりあえずゼロに戻って、ディーンと付き合い直して、そのうち子どもも作るみたいな……ダメなのかな。その辺の感覚がわからないです」
な「キリスト教文化だっていうのもあるんですかね」
す「確かに。シンディーのうちでは食事の前にお祈りとかしてましたもんね」
け「けっこう厳格なキリスト教の家庭だったってことですかね」
す「手術のシーン見てるだけで、ちょっと、ウワッて感じになりませんか……? そうでもないですかね」
け「……なんか自分が冷たいだけですかね(笑)。命に対して」
な「いや、自分もそう思いましたよ(笑)」
け「堕ろしゃいいじゃんって思いましたよ」
な「それも選択だなぁと思いましたよ」
す「トータルで考えたらやっぱり、堕ろしたほうがよかったよなと思います」
け「これからの人生のこと考えたら……だって、まだ大学生でしょ? 堕ろせばいいじゃんって思っちゃったけど……ダメなのかな?(笑)」
な「そういう話すらありませんでしたもんね」
あ「そうそう、そこが俺的にも思って……まずは『おめでとう』とかないんだなって、少し違和感があったんだよね」
な「あぁ……」
あ「産んで育てるのは無理じゃんっていうのは当たり前なんだけど、どこか違和感があったっていうか……」
な「確かにそうですよね……子どもを身ごもるってことは本来、いいことなはずですもんね」
あ「それを、誰一人、全く言わないんだなっていう。おめでとうって。『あなたは大学生で、産むことはできないから堕ろしましょうね』っていう話の流れじゃないんだなって」
け「それはやっぱり現代的な価値観じゃないかな……大学生で、医者を目指してる女の子の人生で、子どもができちゃったっていうのは、障害になるじゃないですか。女の人がキャリアを積んでいくにあたっては。だからやっぱり『うわーっ』って感じなんじゃないですか。女の人が子どもを産んでも全然キャリアを積んでいけますよって状況だったら、もしかしたら違うかもしれないですよね」
す「僕は『堕ろすっしょ』って流れになるのは自然に呑み込めてしまった……あと、手術を途中でやめちゃうっていうのも共感できちゃう。僕痛いのとか手術とかめちゃくちゃ苦手なんで……。けどシンディーは医学生だし、手術とかが苦手っていうのはちょっと考えにくいですもんね」

け「いやぁ……重たい映画でしたなぁ」
す「重たいですよ! ちょっとみんなにトラウマを植え付けたいなと思って」
け「トラウマにはなんなかったけど(笑)。結婚してる人の方がトラウマになる」
あ「ははは(笑)」
け「結婚してますか?」
な「してないっす」
け「じゃあアマネさん集中攻撃だな!」
す「まぁアマネさんがディーン側とは限らないけどね……? 乳首舐められてめっちゃ嫌がる側かもしれない」
け「ファック! っつって(笑)」
あ「なんでや! 夫や!(笑)」

け「結婚に夢が無くなる映画でしたね」
す「4年ぐらい前に観て、けっこうトラウマだったんですけど……観なおしてみてトラウマ深まりましたね」
あ「深まっちゃった(笑)」
す「ほんとに厳しいな……親父が厳しい家の子って、男性経験増えまくっちゃたりとか、ありがちな話だし」
け「あれすごいですよね。25人もやってるってすごくないですか?」
す「20から25って……けっこうやってるやん」
け「大学生ですもんね。で13歳でしょ、初体験。やべー。そこが一番驚いたかも」
す「そういう子だったらヤンキーになるんじゃねーのって思ったんですけど……厳格なんですね」
な「一年に一回以上やってる計算ですもんね」
す「数学的にいうとそういう話になってきますね(笑)」
け「人数が25人なだけで、一人一人とはもっとやってるかもしれない!」

す「ディーンとシンディーって、恋に落ちてたと思います?」
け「落ちたんじゃないですかね? わかんないけど」
す「ディーンのほうは、『男の方がロマンチストさ』とか語ってたりするけど……」
け「ディーンは落ちてたんでしょうね。けどシンディーはそうじゃないんじゃない?」
す「それが僕、すごいショックで……」
け「なんか本読んでた時も、『愛ってなんなの?』みたいなこと言ってましたよね」
す「お祖母ちゃんが『最初は愛だったのかもしれない』とか言ってましたね」
け「最初から好きじゃなかったんじゃない?」
す「観返しててすごいショックだったのは……単純に、1/25だったんですよね」
あ「……なるほど」
け「なるほどなるほど」
す「恋愛関係になったタイミングが、妊娠しちゃった時だった。で、その妊娠しちゃった私を受け入れてくれた……っていうだけであって、シンディーにとってディーンは、男としては1/25なんですよね」
け「だから限界が来ちゃったんだ」
す「ほんとに、ときめきのピークは結婚式で光の中に消えてったシーンなんじゃないですかね……すごく美しいシーンなんですけど、あそこ。でも、出産したりとか、その後の生活の中で現実的に考えなきゃいけなくなったりすると……」
け「だからやっぱり、あの時はカッコよかったからですよ。ひと時のときめきだったわけですよ。別に恋とか愛じゃなくて。なんか歌うまいし、カッコいいし、自分にグイグイ来てくれるし……しかも子どもできちゃった自分のこと受け入れてくれるし。そこがピークになったってだけなんじゃないですかね。感情的には。だからやっぱりおっしゃったように、1/25なんじゃないですかね」
す「タイミング的に結婚するしかなかったけど……しかなかったってこたないけど、1/25だったんですね」

け「……っていう心理を描いた映画なんですかね? 変な話だけど、この映画が何を言いたかったのかわからないんですよ(笑)」
す「結婚生活ってキツくない? っていう話じゃない?」
け「そういうことかな(笑)」
す「ネタバレみたいな話をしちゃうと、監督の両親がすごく冷めきってて、監督が20歳になるのを待って離婚したっていう家庭なんですって。こういうのってキリスト圏じゃよくある話らしいんですけど」
け「もっと早く離婚しろよって話ですけどね」
す「キリスト圏じゃなかなかそうはいかないんですって。この前、シング・ストリートっていう80年代のアイルランドを舞台にした映画を観たんです」
け「おぉ、めっちゃ厳しそう」
す「そう。離婚が法律的に許されてないんですって。すっごくキツい台詞があって。『俺たちの両親の間には愛なんかない。クリスチャン同士、セックスするためだけに結婚したんだよ!』っていう……。まぁ、キリスト圏とこっちの離婚についての感覚はだいぶ違うかなって思うんですね。で、車で喋ってる二人を後ろから移してるシーンがけっこうあったと思うんですね。それは監督自身が、子どもの頃に、車で口げんかしてる両親をよく見ていたから、その視点なんですって。だから、結婚って難しいよねってことを言いたかったみたいですよね(笑)。だから結婚怖いって思ったならメッセージは伝わってるんじゃないですかね」
け「離婚に至るまでの一日を描きましたって映画ですもんね」

す「浮気しなかったのはエライですよね、シンディ。あと、娘がホントにかわいいですよね……」
あ「ほんとかわいいね」
す「舞台から乗り出して手を振ってくるシーンとかもう……天使ですよね」
け「ロリコン待ったなしですよ」
みんな「(5秒ほど沈黙)」
す「待ったなし……?」
け「なんで今止まったんですか!?」
あ「いや、何を言うんだろうと思って……」
す「子どもはかわいいよねって話だったから……」
け「いや、ロリコン待ったなしだったなって」
す「ロリコンは待てよ! 法治国家だぞ」
な「そういう見方もできるっていう……(笑)」
け「あれ……? 引かれてしまったわ。フランキーが脱がされるシーンよかったなーって……」
す「(この人まだ言ってる……)」

す「いいママではあった」
け「子どもに対しては、どっちも良い親でしたよね」
な「でもあれって本当に娘のこと考えてるんですかね……?」
す「嫁のほうですよね?」
な「そうです」
け「いやぁ~……考えてねぇよなぁって思います」
す「ディーンの『おまえは自分のことしか考えてない』っていう言い分も、確かに正当性はあるんですよね。ただ、その娘の存在を逆手にとって結婚生活を存続させようとしているディーンの女々しさも少し現れてるような気もするんですよね……」

す「ちゃんと痩せて植毛すればいいんじゃないかとは思うんですけどね」
け「でも『チャンスをくれ』ってちゃんと言ってるじゃん。あそこで許してあげてれば、ちゃんとハゲも治って、痩せて、かっこいいディーンになったかもしれない
す「全米トップテンに返り咲いたかも。あと、あのトレーナーを捨てろっていう話ですよね」
け「昔はセンス良かったのにね(笑)」
す「ちょっとした裏話にはなるんですけど、ディーンが現代編で着ている服は全部監督の私物なんですって」
け「そうなんだ」
す「で、ハゲて太ってるのも全部監督に似せたっていう」
あ「えぇ~(笑)」

参考資料
↓監督のデレク・シアンフランス
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↓監督に似せたディーン役のライアン・ゴズリング
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瓜二つではないか!
ちなみに普段のライアン・ゴズリング
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す「すげー良いなあって思ったセリフがあって……『稼げって言ってるんじゃなくって、ちゃんと働いてって言ってるの』っていう。男って、女性から、仕事を頑張ってって言われると収入を増やせって意味として取ると思うんですけど……もっと頑張ってって意味で言ってることもあるんですよね」
け「稼ぎだったら、シンディーってかなりいいですよね。お金には困ってないですもんね。だから多分、男としての魅力を取り戻してって言いたいのかな」
す「それなんですよね。男でも女でも、結婚をゴールだと思っちゃう人に対しての警告みたいなところもあるなって思って。結婚したら安泰だって思っちゃう人、けっこういません? 踏み外したら離婚も全然あるからねっていう」
あ「たしかにね」
け「むしろそっからだと思いますけどね」
あ「全然ゴールなんかじゃないでしょ。あんなん紙切れ一枚、出したかどうかってだけの違いだよ」

す「あのあとって、復縁すると思います?」
け「しないんじゃない?」
な「難しいでしょうねぇ……」
け「なんかボビーとくっつくとかね(笑)」
す「あ……それあるかも……」
け「あり得るんじゃないのこれ!? 『これが本当の家族だぜ』みたいな。……ファックですね、そうしたら」
な「ファックですね(笑)」
け「けど、そうなりそうな気はする」
す「まじでありそうですね……。ディーンもまた痩せれば、いい女の子ゲットできるでしょしね」
け「ハゲてても、痩せたらいいですもんね」
す「帽子とかかぶればいいですもんね」
け「いっそステイサムみたいに坊主でもいいしね」

す「復縁の可能性があるにはあるのかなと思ったんです。ていうのも、ディーンが投げ捨てた結婚指輪を、シンディーは一緒に探してあげるじゃないですか」
け「それがあったから、最後は丸く収まるのかなと思ったんですよ」
す「最後も、ディーンに抱きしめられたら、抱き返したりして……そのあと、ついて来ないでって言われちゃいましたけど」
け「そこがよくわかんないんだよなぁ」
す「お母さんはもう死んでますよね、あれは」
け「うん」
す「お父さんとの関係も、そんなに直ってないと思うんですけど……。でも面白いなと思ったのは、最後にシンディーが実家に帰ってきて、父親に『何かあったのか』って聞かれたら、『I don wanna talk to you』って言うんですよ。あんたとは話したくないって言う。話したくない、ってだけじゃなくて。父親に対する嫌悪感は突きつけ始めてるんじゃないかなって思いました。父親との関係も改善されたら、ディーンとももう少し関与な心をもって向き合えるんじゃないかなって……」

あ「シンディーがさ、今後愛されることはあるのかな?」
け「いや……そんなに悲しい話でしたっけ?(笑)」
あ「いや、人として」
け「そんなに、シンディーはダメな人だったかな?」
あ「あいつけっこうだめじゃない? 俺はだめな人だったと思うんだけど」
す「どのへんが?」
け「けど子どもはちゃんと愛してたし、仕事は頑張ってたじゃん?」
す「アマネさんはどのへんがダメだと思ったんですか?」
あ「人としてダメじゃない? って思うんだけど」
け「そんな、誰からも愛されないくらいダメではない気がするんだけど。確かにディーンの方がかわいそうだと思うんだけど、シンディーもいいところはあるっちゃあるから、すげークソ女っていう印象はないんだけど」
あ「そっか……付き合ってる時期は被ってはないんだよね」
け「そうそうそう、自分も、浮気かなって思ったんだけど(笑)。人物が全然わかってなかったから」
す「大人になってからは、シンディーはけっこう頑張っていたと思うけど……過去編でディーンが彼女のことを引き受けてなかったら、もっとひどいことになってたかもってことを考えると、もうちょっとディーンには優しくしてやれよって思うところはあるんですよねぇ……」
け「生理的にもうだめになっちゃったんでしょうね……だからもう全部嫌になっちゃったんだろうな。シンディーなりに彼のことを愛そうとしたのかもしれないですよね。ラブホにも行ってあげたし。『でもやっぱ生理的にアカンわ!』ってことなんでしょうね(笑)」
す「ホテルでちょっと楽しそうにしてるシーンもあったから、大丈夫なのかなと思ったら、『セックスは死んでも嫌じゃあぁ……!』みたいな。女性の性みたいな。こう……男って、仲直りエッチ的なことを信仰してるところはありませんか? 僕だけですかね……?」
みんな「しーん」
す「ケンカしたあと、『とりあえずエッチしとけばおさまるっしょ』みたいなことを考えたこと……人生で一回でも、ありませんか?」
みんな「しーん」
す「一回でもないですか? 僕はありますけど!」
みんな「しーん……」
す「無記名での投票も受け付けますよ。ここんところ名前を伏せてもいいです。●●さん、ありませんか!?」
●●「んん~……あるかもしれないですねぇ」
す「〇〇さんは?」
〇〇「……そういうところはありますね」
す「じゃあここは、みんなが嬉々として答えたような感じで書いておくんで」
あ「おかしいやろ(笑)」
け「あるある~(笑) みたいな」
す「対して、女性からの仲直りエッチって、あんまりないなぁと……」
け「多分、『受け入れてあげるよ』ってスタンスなんじゃないですかね」
な「誘導する、ってくらいまでしかしないですよね」
す「あぁ……。一回、付き合ってた女の子とケンカして、一応話はおさまったんですけど、僕はまだけっこうムカついていて、セックスするような気持ではなかったんですね。で、女の子が誘導っぽいことはするんですけど、相手がセックスしたそうなのはわかってたから全然手を出さないでいたんです。そうしたら『私、セックスがあったほうが炭谷のこと好きになるよ』って直接的過ぎる言葉を発したことがあって……。なんか、変わった子だったんです……そんだけですが」

す「気になったのが、過去編ってディーンはタバコ吸ってなかったですよね」
け「吸ってないっすね」
す「で、おばあちゃんが、『タバコを吸わせて』ってせがむしーんがあったじゃないですか」
あ「あぁ」
す「タバコがわりとキーになってたのかなって思ったんですけど」

す「ディーンが最初に言う『なんかあの子のこと知ってる気がする』って……ありますよね」
け「ロマンチストですよね」
す「なんか幻想的というか……自分はああいう恋愛ってもうできないんだなって気がしました」
け「まだまだこれからですよ!」
す「いや……性欲の減退ですよ」
け「確かにああいうディーンみたいなのって、高校生とか大学生くらいの男の子が言いそうなことですよね。ちょっと周りが見えないくらいにハマってしまうっていう」
す「その辺、ディーンの設定がわからないところがあって……ああして短期の仕事を繰り返したりしてて、あれだけイケメンだと、もっとセックスしてそうですけどね。けど言ってることは童貞っぽいし……けど、クンニ上手かったし、童貞ではなかったっぽいなぁ」
け「そこ?(笑)」
す「いや、ゴーン・ガールでもクンニのシーンがありましたけど、クンニする主人公か、クンニはしない主人公かっていうのは違いがでかいんですよ」
あ「クンニって何回言った?(笑)」

す「音楽の使い分けもよかったですね。過去編はイイ感じのアコースティックの音楽でしたね」

な「ラブホ、未来ルームってあったじゃないですか。ああいうのって海外で流行ってるんですかね?」
す「あぁどうなんだろう。日本でも、回転ベッドとか、ヘンなやつがあったりしますけどね」
な「前にカノンって映画を観てたら、同じように未来ホテルっていう名前のホテルが出てきたんですよね」
あ「カノンって……」
な「アレックスとかの監督した人です。名前が……」
す「名前が出てこない……なんだっけあの人……ハゲてる人……」
あ「炭谷さんと俺が好きな人でしょ?」
す「そうそう……すげぇ名前の人……ハゲてる……」
な「あ、ギャスパー・ノエだ」
あ「そうそうそうそう!」
す「ホテルの話に戻ると、ラブホの機能としてそういうものが求められているのかもしれないですよね。日常の地続きにある場所というよりは、生活とは隔絶されている感じがいいのかもしれないですよね。それこそバリアンってラブホのチェーンは有名ですけど、アジアのリゾートのテイストで作られてますし。同棲してたり結婚してたりするカップルが、普段とは気分を変えられるようにしてあるのかもしれないですね」
あ「バリアン行ったことないや……行ったことあるの?」
す「僕はあります。バリアンにそこまで食いつく?(笑)」
け「これはむにさんにも聞いてみたいな。アメリカではラブホってどういうものなのか。ていうのもイタリアにはラブホってないんですよ」
な「へぇ」
け「で一回、『日本にはラブホテルってのがあるんだろ? 変態だな!』って言われて。じゃあお前らどこでやるんだよって聞いたら『外!』って(笑)」
あ「どの口が変態とか言ってんだよ(笑)」
け「公園とか林の中とかでやるんですって。そもそもそういう目的のためのホテルがないんですって。前にアメリカにもラブホとかが無いって聞いたことがあって、モーテルがそういう目的で使われることはあるくらいだって話で。でもこの映画だとラブホテルって言ってたから、あるっちゃあるんだなぁって」

す「ディーンのタトゥーもクソダサかったですよね。腕のところに漫画みたいなのが入ってましたね。多分ディーンがあれを入れて帰って来た日に、『もう限界だわ!』ってなったんでしょうね、シンディーは」

な「エンディングのところで、花火がパチパチ散るって演出が自分は好きですね」
あ「あぁ……あれ、つらい(笑)。花火が弾けるたびにイイシーンが出てくるのね」
な「そうそう。はじけ飛んでいくのがアジだなぁと」
け「美しい思い出が散ってしまったと。いやぁ、結婚大変ですね(笑)」

す「面白い映画でしたか?」
け「面白いという映画ではない気がします」
あ「もう一度ゆっくり観たいね。ただすぐにじゃなくって、なにかあった時とかに(笑)。炭谷さんはこれ観るの何回目?」
す「僕は二回目です。四年ぶりとかかな」
あ「俺もそれぐらいのタイミングで観返してみたいなと思います」
な「最初のほうとか、関係性があんまりわからずに観てしまっていた部分もあるので、もう一度観てみたい感じがしますね」

対談おわり。

対談終わってから炭谷が思ったことを少し書きます。
シンディーにとってディーンは1/25でしかなかったという話について。
ボビーとは付き合い始めてしばらく経った状態で物語が始まっていますが、ボビーと出会った頃にはきっと、いくつもときめくような瞬間があったんじゃないかなと思います。
その辺はストーリーテリングの魔術ですね。
物語をどこから語り始めるかで印象は全然違うという話。

シンディーの同僚の女性について。
そもそもディーンが病院に到着してすぐの段階で、『あぁ、あなたがディーンね』って、ちょっと鼻で笑うような言い方をしやがるんですよ、こいつ。
ちょっと喋っただけでそんな言葉を吐くってことは、やっぱりここって、普段シンディーがディーンの話をしてるってことだと思うんですよね。
この映画の脚本は60回以上書き直されているということと、監督が徹底してリアリティーにこだわる人なので、僕はこの同僚の言動も計算して作られているんだと思ったんですね。
シンディーもディーンも、かなり深いところまで人物の設定が作られている。
シンディーの上司の医師が最低な野郎だというのも「あるある」だし、同僚の女のムカつきっぷりも「あるある」だったなぁと思います。
またここのシーンって脚本の構成的にも上手くて、ディーンがのちにブチ切れてしまうのはこの女のいちいちむかつく発言も効いているんだなぁと思います。

半分冗談で「クンニする主人公」について書きましたが、引き合いに出したゴーン・ガールの主人公とディーンには共通点が。
それは「マザコン」だということ。
そして結婚してからは妻にウンザリされてしまっているけど、交際中はとても「尽くす男」だったという点。
セックスのさい、女性器を舐める男というのは、意外なことにとても少ないようです。
フェラチオを求める男はとても多いことと、とても対照的です。
相手の性器を舐めるということは、自分には肉体的な快楽は生じないため、奉仕的な行為に見えます(実際には相手の肉体を支配しているような感覚など、精神的な快楽はあると思いますが)。
しかし、異性の性器を口に含むという行為自体、そもそも自然な行為とは言えません。
僕の支持する説として、クンニリングスをする男性は母胎回帰願望を抱いているというものがあります。
映画に限らず、ただの「セックスを描く」という表現をしたいだけなのであれば、ただ挿入シーンを描けば済みます。
クンニリングスのシーンがあるとすれば、そのシーンには何かしらの意図が込められているとみるべきです。
もちろん僕の深読みは外れている可能性が大きいですが、2時間の映画で15秒近くもクンニリングスを描くのであれば、そこには15秒使って描きたい何かがあったのでしょう。
自分勝手な中出しセックスをする野蛮なボビーとの対比として、奉仕的なディーンを描いたというだけの話かもしれませんが。
しかし僕の中で、ゴーン・ガールの主人公と被って見えてしまうところがありました。
どちらの主人公も、尽くす男に見えて、結婚した途端に堕落していきます。
男は、よく女性から「妻じゃなくて、自分を甘やかしてくれるお母さんが欲しいだけ」と批判を受けます。
どちらの男も、そういう話に当てはまります。
ディーンのバックボーンとして、幼い頃に母親が出て行ったというエピソードがあります。
また、ディーンと、娘のフランキーのかかわりをよく見てみると、父と娘というよりも、兄と妹のような関係に思えてきます。
ディーンは父ではなく、兄のような存在だった。
夫ではなく、子どもになりたかったのではないでしょうか。

ディーンもシンディーも、それぞれ、自分が、自分の親のようにはなりたくないと思っている。
ディーンは母親がいない家庭育ち、自分は結婚して家族と楽しく過ごしたいと願います。
シンディーは父が母に精神的な虐待を加え続ける家庭で怯えながら育ち、自分はどのように恋愛の相手を選べばよいのかわからないまま過ごしてきた。
ディーンは母親という存在が欠落した環境で育ちましたが、シンディーは両親と同じ家で生きてきました。
ディーンは、両親が別れさえしなければなんとかなると思い込んでいるフシがありますが、シンディーは、一緒にいるのに傷付けられてしまう悲しい関係を見せつけられてきた。
それにおばあちゃんがかけた言葉が呪文のように響いていたんだなぁという気がします。

こうして考えてみると二人が長く続かないのも仕方がないな、と思いました。
いや、ディーンがかっこいいままでいたならこんなことにもならなかったなとは思うんですが……本当に。
結婚した途端に男としての魅力を失っていく男のなんと多い事よ。

あとラブホの話。
僕とナカオさんが好きなアメリカ製アニメの『ザ・シンプソンズ』でもラブホが出てきました。
原始人ルームとか、そういう凝った設定の部屋が多いようですね。
アメリカのようなところだと住宅街の郊外にあるという点が重要なような気がします。
やはり日常と隔絶された空間・気分に浸るためのセッティングが求められるのかなぁと。
日本のラブホの場合も2つパターンがあって、歓楽街の近くにあるものだと、食事の後ちょっとしけこむ人が多く、普通のお部屋が多い。
けど、日常と隔絶されてる感がウリのラブホもあるなーと。

炭谷の話 おわり