シンコシンクの二人(炭谷と溝野)で、映画を観てきました。
シンコシンク映画部発足しようと思います!

金曜日の午後10時45分、上映終了。

炭谷(以下「す」)「すみません……おしっこ行きやす」
溝野(以下「み」)「同じく……」
す「劇場、めちゃくちゃ寒くなかった?」
み「寒かった。やばい」

トイレを出て。

す「やっば……めっちゃくちゃ出たわ。こんなに気持ち良い放尿久しぶり」
み「自分もけっこう前から我慢してたね」
す「ぶっちゃけ、始まって30分くらいで行きたくなってたわ……」
み「映画に集中できてなかった可能性あるよね」
す「おおいにあるね」

満員のエレベーターに乗る。

知らん若者1「『お前は誰なんだ』……とかあれ、完全にシュワルツネッガーwwww」
知らん若者2「ぐひょわわわわわわわわwwww」
知らん若者3「(何言ってるか忘れたけどうるさかった)」
(言ってる意味わからなかったけどほんとにこんなこと言ってた)

エレベーターを出て。

み「満員のエレベーターの中で、あのボリュームで喋れる神経がわかんないんだけど……」
す「やばいうっさかったね。いや、松本人志さんも言ってたけどさ、「飯屋とかでうるさいやつの話、面白かったためしがない」って……あれマジでそうだよね。なんでそうなるのかな」
み「話してることがつまらないってわかってるから、声のデカさで誤魔化すしかないんじゃない?」
す「あーなるほど……。それだと、「自分つまんない」って本能的なレベルではわかってるってことだよね?」
み「それかあれ。「俺面白い事言ってるのに周りが笑ってない……聞こえてないのかな?」って思っちゃってる」
す「ふつうに聞こえてて、つまんないしうるさいから笑ってないってのを、「聞こえてないのかな?」って思っちゃってんの?」
み「そう」
す「けど確かに、理屈で考えるとそうなっちゃうよなぁ。悲しい生き物すぎでしょ」

デニーズに到着して。

す「じゃあぼちぼち『君の名は』の話しますか。面白かったですか?」
み「好きな感じじゃないけど、面白かったと思うよ」
す「俺も面白かったよ。好きじゃないけど」

この時点でほとんど同じような感想、点数になることが予想された。

す「点数付けるとしたらどれくらい?」
み「んー……50いかないよねぇ。45点くらい?」
す「おお。思ってたより低い。俺は55から60とかになるかなぁ……。じゃ、新海作品を好きな順番にしてみるとどうなる?」
み「んー……。自分は
雲の向こう>秒速>ほしのこえ>言の葉>星を追う子ども>君の名は。
になるね」
す「あなたの場合、他の新海作品が好きすぎってのはあると思う……」
み「けど、星を追う子どもより下いっちゃったよ」
す「なるほどね(笑)。俺は
秒速>言の葉>君の名は。>ほしのこえ>>星を追う子ども>雲の向こう
って感じっす。他の作品と比べちゃうと……」
み「ちょっと微妙って話になっちゃう」
す「まじか……あなたがべた褒めしてくれるかと思って誘ったところがあるんですけど。まぁしょうがないか」

ここから完全にネタバレしていきます。
ご注意ください。

み「ラッドの歌ちょいちょい入ってくるのなんなの」
す「まぁ、コラボってことで……ラッド側も売りたかったんじゃないの?」
み「わかるんだけど、歌寒い」
す「PVの時はちょっと良かったよね?」
み「新海誠マジックだよね。あれは良かった」
す「PVディレクターとしては超一流だからね。カラオケでワンモアタイム歌う男の8割は、秒速でワンモアタイムを知ったと言われているね」
み「そんな話初めて聞くんだけど……」
す「ラッド側もまぁ当然、売っていきたいわけじゃないですか。全盛期ほどは売れてないわけだから」

※説明させていただくと、僕は初めて付き合ってた女の子がラッドファンだったことや、その子に「ラッドのどこが嫌いか」をねちっこく語ったことが別れる原因になったことから、未だにアンチラッドウィンプスの気があります(逆恨みとも言います)。

み「オープニングアニメの2分くらいめっちゃ苦痛だったんだけど」
す「なんなんすかねあれ……テレビアニメっぽさ意識した演出?」
み「みつはの大人になった姿出てたし、「あぁこれは時間がずれてるトリックなんだな」って思ったよね」
す「あー、なるほど。そこで気付くか。ぶっちゃけ俺、事前にタイムリープものってネタバレ食らってたのに、そこには気付かなかったです(笑)」
み「制服が変わってくところの時点で「おっ?」って思ったけど、大人になっちゃってるところ出すのはどうかなって思うね」
す「テレビアニメだったらさ、10年ぐらい前から、使いまわしのオープニング映像がちょっと変わるみたいなネタあるじゃん。新キャラが登場したら、次の回のオープニングでそいつが出てるシーンが追加されてるみたいな」
み「あぁ、あるある」
す「君の名がテレビアニメだったら、あの場面で二人の服装を追加してくって演出ができたかもしれないけど、映画作品であの映像を流すメリットってあんましない気がするなぁ。観てる人に、先を想像させる狙いで作ったって感じなのかな」
み「まぁ、俺等にとっては寒かったよね」
す「納涼的な意味で言えば、真夏に公開してほしかったっすね。」
み「テレビアニメは一話ごとの区切りがあるけど、映画だったら区切りがないから「あのシーンなんなんだろ」って考えさせる時間なしに二時間突っ走るから、観てる人が深く気にしないだろって思ってたのかもしれないね」
す「そのへんのこと考えると、この映画って若い世代……細かい部分から作品の先の展開を予想したりしない層を狙って作ってるところがあるのかもね」

す「語りから入るところは新海誠っぽいよね」
み「わかる。男のモノローグ大好き過ぎだよね」
す「男と女のモノローグがシンクロしていく感じの寒さはよかったよね」
み「あと電車に乗るシーンも大好きね」
す「男は絶対座らないで、ドアにもたれかかって外観てるのね。あと、自販機からジュース取るところ」
み「新海さんが好きな要素っていうのは、相変わらず入りまくってるんだよね。もう手グセになってる感じがするっていうか」

み「けど、俺が好きな新海誠が全然いなかったんだよ」
す「俺は新海誠好きじゃないけど、全然いなかったっていうのはかなり同感」
み「もっと気持ち悪くないと新海誠じゃない! 気持ち悪い男のモノローグをじゃんじゃん入れてくれ。俺は新海誠の気持ち悪い男っぽいところが好きなんだよ」

す「ちょっと思ったんだけどさ、今回は、女の子側の視点もめちゃくちゃ描かれるじゃん。これってほしのこえと近い構造だとは思うんだけどさ」
み「ほう」
す「要するに、男キャラと女キャラ、両方に新海誠を投影するって作り方をしてると思うのね。秒速が頂点だと思うけど、男キャラだけに新海誠を投影して、女は「主人公にとって理解できない謎めいた行動をとるいきもの」として描く……ってやると、男はどんどん内省的に、ナルシスティックにモノローグを繰り返していくしかなくなる。新海誠の主人公は、惚れた相手を手に入れることしか目的がない。で、今回は一応ダブル主人公で、企画当初から恋愛が成就して終わるって決まってたと思うんだよね。しかもいつもの新海映画とは違って、物語が壮大だから、気持ち悪いモノローグなんてやらせてると風呂敷をたためない」
み「言われてみると納得するんだけどさ……けど、これが売れる映画なのかって思っちゃうんだよね」
す「新海誠ファン層に届けるっていうより、ラッドとかが好きな高校生とかを狙ってんじゃないの? 初期のラッドって、自分の彼女大好き大好き~ってことをとにかく歌ってたじゃん。んで、女の子のリスナーなんかは、その言葉を、自分が受けているかのように錯覚してしまったり、「自分もこんなふうに思われたい」って聞き方をしてたと思うのね」
み「それは炭谷さん考えすぎじゃないの(笑)」
す「まぁそうとも言うけど。君の名観てる時も、映画館で女の人のすすり泣きが聞こえたとこあったじゃん」
み「あったね。山頂で二人が合うシーンだよね」
す「あれさー、あそこでどうやって泣くの?(笑)」
み「自分にはわかんないよ(笑)」
す「いや、ぶっちゃけ俺も、どこかでは泣いちゃうかもって思ったの(笑)。理屈では新海誠嫌いだけど、絵と音楽が美しかったら泣かされるかも……って思ったんだけどさ、あのシーンのところとかめちゃくちゃ冷めてた(笑)」
み「ちょっとキツいもんがあったよね(笑)」
す「そう、そんでさ、やっぱり物語作品って、作品のトータルで売れるか売れないか、ウケるかウケないかが決まるわけじゃないじゃん。もちろんコンセプトと外れて食い合わせが悪いのはダメだろうけど、「こういうシーンが大好き!」「こういうキャラが大好き!」みたいに、受け手は自分の求めるイメージがあったかどうかで、作品が好きか嫌いかを決めると思うの」
み「はぁ。まぁたしかに」
す「「男の子にこんなに思われたい」が好きな女の子がけっこういるんじゃない?」
み「なるほどね」
す「新海さんって、女性を描けないじゃん」
み「描けないよねぇ~」
す「んで、それは君の名でも全然変わってないじゃん。むしろみつはにも新海誠をぶっこんじゃってる。けど、女性を描けているかどうかと、女性にウケるかどうかって、これも全然関係ないことだと思うんだよね」
み「そうなの?」
す「宮崎駿も村上春樹も、女性を描くの全然うまくないじゃん。国民的作家だけども。まぁ、女性を描くのが上手いって褒められてる人見たことないし、女性作家も男性を描くの上手くないじゃんっていう話でもあるんだけどさ。ただ宮崎駿なんて、女性を神聖化しまくる域までいっちゃってるけど、女性からの人気もめちゃくちゃ高いじゃん。それも元祖ぶりっ子の松田聖子だって、女性からの信奉が厚かったわけだし。「理想化された女性が出てくる物語」を、女性も求めてしまってるんじゃないかなって思う」

み「映像のレベルが劣化しすぎてるところも気になったんだけど」
す「ちょっとやばいよね。冒頭のオープニングアニメ風のところから「ちょっとやばいんじゃないか」って思ってたけど、みつはの登校シーンの作画のレベルもめちゃめちゃ悪かった。全体的にクオリティは下がってたよね」
み「才能が尽きちゃったのかな」
す「いや、尺が長いから、細かいところまで完成度上げられなかったんでしょ。そういうところのこだわりよりも、制作ペース上げなきゃいけなかったんだろうね」
み「自分の好きな新海誠じゃねぇよ……」
す「電車のCGとかもやばかったでしょ。プレステ2の電車でGO! のグラフィック使ってんじゃないの?」
み「電車でGOwwwwww」
す「車のシーンはグランドセフトオートヴァイスシティってウワサですよ」
み「ほんとにひどかったね」

す「ていうか、これまでの新海さんの作品より数倍デカい規模の映画じゃん。そのことで言いたかったんだけど、むしろ俺がオープニングの映像で一番気になったのって、『企画・プロデュース 川村元気』って名前が入ってたところなのね」
み「そうなの?」
す「この人って実写でもアニメでもかなり仕事してるプロデューサーなの。で、かなり自己顕示欲の強い人なんだと思うのね。自分で本とか出したり、雑誌で連載したりしてて。自己顕示欲があるってことが悪いとは言わないけどさ」
み「へー」
す「で、この人のがプロデュースしてる映画でパッと出てくるのを挙げると、電車男、モテキ、バケモノの子、バクマン、寄生獣とか」
み「うああっ! 寄生獣の映画、クッソつまんなかった(笑)」
す「まぁこういう人なんですよ(笑)。で、映画の内容にもかなり口出しする人なの。俺が聴いてたラジオで韓国の映画監督と対談してたんだけど、「このクリエイターにこういう話を作ってほしい」ってことを考えて仕事を持ちかけるってこととか、するんだって。で、君の名にも「企画」でクレジットされてるじゃん。だからこの映画って、新海さん成分が薄いのは、川村成分が注入されてるからじゃね? って思うの」
み「おぉー、なるほど!」
す「海に川が入っちゃったわけよ」
み「そのギャグはちょっと意味わかんないけど……」
す「ウジウジしてる誠に、元気が「元気出せよ!(肩バンバン叩く)」ってやっちゃったわけよ」
み「そのギャグめっちゃつまんないよ!?」

川村元気さんは、担当した映画にロックバンドやアーティストの曲を使うことが多いです。
映画のコンセプトと、日本のロックが持つモチーフがマッチする、客層が被っているなどといろいろ分析した結果で起用しているのだと僕は思います。
たとえばバクマンではサカナクション、寄生獣ではバンプ、青天の霹靂ではミスチル、
何者では米津玄師と中田ヤスタカなど。

す「マジで、多分川村さんはストーリーにもけっこう口出してると思うの。最初に入れ替わった時にさ、バイト先で先輩がチンピラに絡まれるじゃん。で、その先輩を助けて、主人公がちょっと先輩に好かれる。この手口って、まんま電車男だよね?」
み「あ。ほんとだ」
す「新海さんって、物語上で便利な悪役をテキトーに出すってことしなかったと思うんだけど、今回、そのへんちょっとひどかったじゃん。俺は川村さんの映画あんま観てないけど、これって川村さんの手グセなんじゃないかな」
み「あそこひどかったよね。カッター出して何すんのって思ったら、スカート切れてるだけって……」
す「しかも、すぐに「あいつら~!」とか言って、犯人をチンピラたちって断定するじゃん。ふつうに考えたら、なんか切れちゃったのかな?って思うじゃん」
み「あそこは作劇としてかなりダメでしょ(笑)。そもそもつまようじ入れてるって時点でかなりどうしようもないチンピラじゃん。しかもなんであいつカッター持ち歩いてんの?」
す「ね。ナイフとかならわかるじゃん。なんでカッターなの? まぁ、あいつらが小物だって感じ出したかったんだろうけどさ、それなら盗撮されるとかにすればいいのに」
み「カッターで相手に気付かれないようにスカートだけ切るって、どんだけ高等技術持ってんだっつうね」
す「プロによる犯行ね。まぁ「糸」にからめたみつはの特技を活かそうって思ったんだろうけど、それなら転んじゃったとか、どこかにひっかけちゃったとかでもいいじゃんね。悪役作って話を展開させるのって楽だからね」
み「たしかに、これって新海さんはやらなかった気がするね」
す「だからそのへんは、「元気出せよ!」っつって新海さんにやらせたんだと思うわ。あとみつは側のワルの描き方もおかしいじゃん。瀧が入ってる時にみつはが悪口言われてて、瀧が机蹴り倒して、不良たちが恐がるシーンあったじゃん」
み「うん」
す「ふつーに考えてさ、ふつーの女の子がちょっと反抗し始めたくらいで不良がビビるのおかしいじゃん。あっち、女の子二人と、男が一人いるんだよ。女の子だけの軍団ならわかるけど、男がいるんだよ」
み「たしかに……ケンカになっても怖くないだろうね」
す「しかもさ、あの不良たちって、みつはのミラーのはずじゃん。男は頭染めてて、ツーブロックにしてて、都会的なヘアスタイルしてるじゃん。「こんなところ嫌だ。都会に行きたい」って思ってるけど、それが悪いほうに向かって、みつはみたいな田舎の象徴的な儀式をしてる女の子をからかったりしてるわけでしょ」
み「あー。そっか」
す「絶対、あの不良ってもっと上手く使えたはずなんだけどね。そんなことよりも、話をとっとと転がしてくほうを取ったってことなんだろうね」

み「とっとと話を転がすってことで言うと、入れ替わりの後の周りの反応が薄いよね。「昨日おかしかったよ」で終わるはずないじゃん」
す「それね……。全体的に、細かいところすっ飛ばしすぎなんだよね。その辺突っ込み始めるとマジできりがないと思う。まぁエンタメ映画ってことで、細かいとこには言及しないで転がしてくスタンスをとったんだよね」
み「新海さんって細部にこだわる人だったと思うんだけどなぁ」
す「細部って話するとさ……いきなりみつはが泣いててびっくりしたんだけど」
み「あれちょっとやばかったよね。いつの間に好きになってたの(笑)」
す「ちょっと好きになってるとかならわかるけど、泣いちゃうくらい好きって感情だったら、絶対にきっかけとかちゃんと描かなきゃダメじゃない。モンタージュってそこまで便利じゃねーから(笑)。モンタージュって映画の特訓シーンとかでよく使われるけどさ、感情の変化の過程をすっ飛ばすために使うのってどうなんでしょうね」
み「あれは完璧にダメだったでしょ。なんか多分、新海さんって恋愛感情が芽生えるところを描くってことができないんじゃないかなって思うね」
す「失礼だけど多分、本人が一目ぼれタイプなんじゃない? あと面食い。だから人間性に惹かれるってことがないんじゃないかな。だから描けない」
み「それほんとに言ったらアカンやつや……」
す「恋愛引きずってる男ってさ、俺も含めてだけど、相手の事やっぱり本当に観てたかっていうと、違うんだよね。自己愛を投影できる相手を求めてただけって感じがするっちゅうか。あと新海さん自身がある種恋愛体質なんじゃないかって思うのね。っていうのは、あの人の作品に出てくる「魅力的な女性」って、みんな恋してるじゃない。結婚してたり、結婚予定だったり、不倫してたり」
み「あぁ……それはそうかも」
す「新海さんが、女性を、容姿でしか価値の判断をできてないってことじゃないかな。言い過ぎかもしれないけど。だって、容姿が綺麗な女性だって普通に悩んだり嫌な想いするじゃない。下手すれば、綺麗な女性だからこその受難すらあると思うし。ひがまれたり、男からアプローチされる機会が多かったり」
み「たしかにそういう面もあるよね」
す「あと、綺麗な女性には恋愛をさせないと気が済まない理由としては、「自分が綺麗な女性にアプローチしない口実づくり」。多分パートナーがいる相手だったら、すんなり諦められるんじゃないかな。別の綺麗な女性が恋愛しないことにはなんの不自然さもないんだけどね。その辺の描き方は特徴あるなって思う」

す「あと、ギャグセンスのなさも非常に気になったんですが……」
み「イヴの時間の時も想ったんだけどさ、シリアスなシーンでギャグ入れるのやめない?」
す「アニメ映画のギャグのつまらなさっていうのは、どうしていったらいいんだろうね。いや、君の名では二つ、面白いシーンがあったと思うの。最初の入れ替わりで、みつはが「わたし」って言っちゃうところと、後半で瀧が泣きながらおっぱいもんでるところ」
み「あそこはちょっと面白かったね」
す「けどさ、どっちもけっこう引っ張りやがったじゃん?」
み「引っ張ったね。「わたし」でおかしかったら「わたくし」に行くとか不自然すぎでしょ」
す「新海さんもさ、面白いギャグ作れて嬉しかったんじゃない? 下手したら自分のアニメで面白いギャグを思いつくの、人生で初とかなわけでしょ。で、おっぱいのほうも「おねえちゃんがおかしくなった」で十秒ぐらい引っ張ったでしょ」
み「あれはクドかったねー」
す「十秒あったら他にいろんなことできんだろ! って、見終ってからけっこう怒りが湧いたわ。けどアニメ映画ってギャグが面白くなりにくいのかもしれないよね。庵野監督ですらギャグは面白くないから……」
み「じゃギャグが面白いのってどんなの?」
す「宮崎駿さんと今敏さんじゃない?」
み「あぁ……なんでその二人は面白いんだろうね」
す「わからん……」

す「そういや、今回飯食ってるシーンが多かったじゃん。けど全然美味そうじゃなかったね」
み「たしかに。かっこむシーンとかなかったからかな」
す「食べもの自体が美味しそうかどうかっていうより、食べる側のリアクションが描けてないってことか。あと、作るシーンがほぼなくって、食わされてるシーンばっかなのも問題かな」
み「コロッケサンド作るところはよかったよね」
す「あ、あれはよかった。友だちとの関係性も表現できてたしね」
み「けど食ってるところ描かないっていう……」
す「ほんとそうなんだよね……」

す「宮崎駿さんの流れで言うと、まぁ星を追う子どもは宮崎アニメオマージュだったじゃない。今回それ諦めた感じがあるよね。山頂とか、ハウルの山頂っぽい感じがするけど」
み「確かに似てるね」
す「星降ってるし。なんか今回は宮崎駿を諦めて、細田守のほうに走った気がするんですよ。安易な話だけど、タイムリープは時かけっぽいし、プロデューサーの川村さんは細田作品にも参加してる人だし」
み「最後の走りまくってるところとか、けっこう時かけっぽいよね」
す「けど時かけって、最後のほうめちゃくちゃスリリングじゃん。こっち、全然スリルがなかったんだけど……」
み「タイムリープものって、「最悪の事態」をいったん描いてから、一度過去に戻るって構成ができるじゃん。失敗したら、ほんとに最悪になるんだっていうことを実際に一回見せることができる」
す「そうだよね。こっちって、「隕石落ちます。街消滅します」って情報は入るけど、そこにどんな痛みがあるのかってことがあんま伝わってこない。俺は時かけのアニメ、十年前に映画館で観たきりだけど、真琴が転んでズタズタになるところとか今でも目に焼き付いてるしなぁ」
み「みつはも転んでたけど、なんかあんまり痛そうに見えなかったね」
す「なんていうんだろ……身体性みたいなものがちょっと新海さん、描くの上手くない気がする。あと、時かけの場合、主人公の考えの至らなさのせいで不幸を回避できないって構成になってたから、観てる側も共感しちゃうんだよね。そういや時かけのギャグは上手いな。瀧のほうは、瀧とは全く関係ない天災が起きちゃうよーって話だから、別にね」

み「天災っていうと、あの湖がクレーターだっての、めちゃくちゃ初期からバレバレだったんですけど」
す「それは俺も想った。丸さとか、地面の抉れ方とかね」
み「1200年前にも落ちたから、また落ちてくる! ってどんな理論だよ。その辺のすっ飛ばし方もほんと良くないと思う」
す「観る前にさ、「震災を反映してる」ってネタバレレビューツイートを見かけたんだけど、別に反映はしてなかったよね。描写はちょっと意識してるところはあったと思うんだけど。全然社会的な意味ではなかった」
み「ちょっとはあったよね。隕石が落ちたところ、なんで立ち入り禁止になってんの?」
す「放射能とかないんだから、また住みゃいいじゃんね(笑)。津波の場合だと、津波被害が出る地形だってわかってるから、人はもう住まないってのは当たり前だけどさ。隕石は関係ないじゃん」
み「モニュメントとかたつでしょ。俺、モニュメントが見たかったな」
す「いや、多分新海さんが廃墟好きなんでしょ……雲の向こう、みたいな廃墟が大好きなわけよ」
み「たしかにあの人絶対廃墟好きだな」
す「だからそこはさ、川村元気に、やりたくないモチーフばっかり押しつけられて病んでたはずじゃん。新海さん。それ見て、「ここはモニュメントじゃなくって、廃墟書いていいからな! 元気出せ!」みたいなこと言われたんでしょ」

みんなが実際に震災のことを思い出さなくても、五年前の悲惨なニュース映像などは多くの人が記憶していると思います。
人々を不幸にする天災から、人々を救うシーンを描くということは、うまくいけば見る人たちの無意識に訴えかけることができると思います。

す「あとさ、みつはの父ちゃんって、完全に星を追う子どもの考古学者だよね」
み「ほんとだ。嫁が死んで仕事一直線になっちゃってるね」
す「同じモチーフを繰り返すのって作家にはよくあることだけどさ、多分あのキャラ造詣にした理由の一つは、星を追う子どもって作品に後悔が多いんじゃないかと思うのよ。だから今後の新海さん作品で、星を追う子どもの繰り返しは何度か出てきそう」
み「なるほどね」
す「で、あと一つは、新海さん自身が結婚してて子どものいるでしょ? でも仕事に打ち込みまくってるじゃん。そんな自分をちょっと投影してるんだろうなって思います。悪役として描いてるのは、家庭を顧みないことに罪悪感があるんじゃないかと」
み「ストーリー的にみると、父親となんの和解もせずに終わっちゃったね」
す「そのキャラクターどうなったの? みたいな描き方多すぎっすよね。もいっこ気になったのが、てっしー。父親との関係性は、最初のシーンですごくわかってよかったの。けど最後、親父が「なにやってんだ」って言っただけで「すまん……ここまでだ……」ってあきらめるじゃない。みんな、努力してない気がするのね。放送室にいた女の子も、自分の限界を越えたりしなかった。カジュアルな感覚でみんなを救った、みたいな感じでちょっと納得いかない。頑張ったのって瀧だけじゃない。これってやっぱり新海さんの行動原理が「かわいい女の子大好き」か「イイ感じのアニメ作りたい」しかないってことだと思うのね」
み「ていうかそもそも、ダイナマイトを盗んで来るってことをライトに描きすぎじゃん」
す「ほんとにそう。みつはのこと絶対に信用してるって描写もなかったしね」

み「やばい……批判的なことしか言ってないじゃん」
す「なんか褒めるところある?」
み「声優よかったね」
す「あ、よかった。神木君ほんとよかった」
み「長澤まさみさんは、金輪際声優業には手を出さないでいただきたい……」
す「モテキで、いい感じの女役やってたのよ。その縁があってキャスティングされてんじゃないかと思う。元気に。言っちゃうと神木君も、バクマンで主役やってるし」
み「監督のツテがあるってことなのかね」
す「あとキャラデザ良かったよね。新海さん作品ってやっぱりみんな地味だったし」
み「今回はわかりやすい記号とかもついたりしてたね。そこだけでだいぶ作品の印象変わるよね」

す「これまでの新海作品と対比するって観方しか、俺らにはできないっぽいね。巷だと多分、これが新海作品初体験って人たちもけっこういるっぽいじゃん」
み「そうっすねぇ……。これまでの作品を知ってるから、先読みできちゃう構造だったってのはあるかも。ほしのこえでは男女間に物理的な距離があった。言の葉までは、精神的な隔たりがあるから結ばれることが困難だった。ってなると、次は時間の隔たりでくるでしょって予想出来ちゃった」
す「へー。それは面白いな。俺はなんつうか、通信手段の変化って見方があると思ってたけど、あなたみたいな考え方は思いつかなかったな」
み「通信手段の変化ってどういうこと?」
す「携帯電話とかネットの発展で、コミュニケーションの在り方って根本的に変わったじゃん。新海さんって今四十三歳だから、十代の頃は携帯電話ってなかったでしょ。だから携帯電話ネイティヴの世代じゃない。携帯を持つことに違和感があったと思うのね。だからほしのこえでは、携帯でのコミュニケーションを不便にしたり、無効化したと思うのね。で、今度は、携帯でいつでも心が繋がりあうなんてうそじゃん! メールしたためても、キモがられるのが恐くて送信できねーよ! っていうことを描いたと思うのよ。いつでもコンタクトできるかもしれないけど、自分の心がそれを恐れるっていう話ね」
み「はー。なるほどね」
す「新海さんがSNSとかをやってる人間だったら、次は「SNSでは繋がってるけど、距離縮められないっす」みたいな話をやってくれると思うんだけど……たぶん仕事人間だから、SNSの感覚を取り入れるのってもう無理だと思う」
み「自分は次はロボットモノ来ると思ってるけどね」
す「ほしのこえの?」
み「そう」
す「くるといいですね」

み「新海さん、雨に頼りすぎじゃない?」
す「雨上がりに再会するシーンやりたすぎって話?」
み「そうそう。あと、雪が降ってる時はすれ違わないといけない感じね。まじで、ほんとに納得いかないのが、ラストで再会した後描かないじゃん」
す「描けないんでしょ……。山頂で会うシーンの話に戻るけどさ、あそこのやりとり、あなた好きだった?」
み「嫌い。寒かった」
す「でしょ。なんていうか、村上春樹をかなぐり捨てて、エロゲ原作深夜アニメに走っちゃった感じ」
み「それめっちゃ腑に落ちる」
す「多分元気が、新海さんから村上春樹の本を奪ったと思うんだよね。「終わったら返してやるから! 元気出せよ!」っつって」
み「そのギャグ今日四回目だよ!? 大丈夫ですか!?

この駄弁りのあとにネットのレビューで「新海誠の出自はもともとアニメーション畑ではなく、アダルトゲームだ」というものを読んで納得。新海さん自身としても、エロゲーからの影響は強いという自覚があるそう。そう考えると、「恋人になるところ(≒エッチシーン)で物語はエンドマークを迎える」という構成が、そもそもアダルトゲーム的なのかもしれません。

す「口噛み酒飲んだ後の、精神世界みたいなところに入ってくシーンはよかったね。最初の細胞分裂みたいなアニメは全然いらなかったけど、色鉛筆で描かれた過去の回想はよかった」
み「あそこはいいね」
す「まぁ、ナウシカのランランランララランランランを色鉛筆にしただけだけど……。いや、けど、あそこのシーンでばあちゃんと父ちゃんがケンカするとこひどくなかった? 「婿養子の分際で何を言っとるか!」」
み「あれちょっとひどかったよね(笑)。そんなにわかりやすい説明台詞あっていいの?」
す「アカデミー賞に最優秀説明台詞部門があったら、受賞間違いないね」

す「親子関係描けないよね。ボンボンのくせにね。代々続く建設会社の息子らしいじゃない」
み「建設会社のせがれっていうのは納得いくかも。CMでも仕事してたし」
す「瀧君が建築に興味があるっていうのも全然意味わかんなかったよね……途中、就活のシーンに入ったじゃん?」
み「あれ意味わかんなかったね」
す「映画の前の予告編で「何者」ってあったじゃん。就活の映画」
み「あれ全然面白そうじゃなかったね」
す「あれも川村元気プロデュースなのよ」
み「ああっ!」
す「多分、製作時期被ってるじゃん。川村元気だと思うのよ、君の名はに就活入れてきたのって。新海さんとの打ち合わせなのに、何者の打ち合わせと間違えちゃって「では就活のシーンですが……」みたいな話をしちゃったんだと思うのよね。「君の名は」「何者」……ちょっとタイトルも似てるしさ」
み「いやそこは間違えないでしょ!?」
す「いや、めっちゃ忙しいだろうし、わかんないよ。そこは」

ほか
「団地好きすぎ」
「瀧の家族構成・バックボーン謎すぎ」
「新海は下ネタやらないで」
などなどの話が出ましたが省略します。

す「じゃあ最後に、まとめの感想を」
み「なんつうか、みんなに面白いって言われたい作家んなっちゃったんですね」
す「なるほど。まぁ俺としては村上春樹を読み直していただきたいです。映画も大ヒットしたことだし。なんなら次回作は村上春樹作品アニメ化でもいいですね。かえるくん東京を救う」
み「なぜそのチョイス……」

おわり