今年のサマーソニックで、マニック・ストリート・プリーチャーズというバンドがライブを行ったんです。
彼ら、20年前に『ホーリーバイブル』というアルバムを発表したのですが、そのアルバムから全曲演奏するという、いわゆる完全再現ライブだったのです。
私、これまでの人生で聴いてきたアルバムでベスト50を作成するとしたら、この作品はまず間違いなくランキング入りさせることになると思うのです。
とにかくこの「ホーリーバイブル」というアルバムが好きなのです。
近年、海外のバンドが日本でライブツアーを行うことが減っております。
海外の音楽を聴く人がとても少なくなっているらしいのです。
そんな変化の流れにあって、英国では国民的バンドとして支持を集めているまにっくストリートプリーチャーズ、単独ライブではなくフェスのアクトとして完全再現ライブを行うことになってしまったという……。
単独ライブだったら何が何でもはせ参じる所存でしたが……。

このマニックストリートプリーチャーズというバンドについて少し語らせてもらいます。
幼なじみ四人で結成されたバンドなのです。
メジャーデビューを果たすまでけっこう時間が掛かったバンドということもあってか、1stアルバム発表時には「このアルバムを世界中でナンバーワンにして解散する」と発言して、ちょっとしたセンセーションを巻き起こします。(僕は「2000万枚売って~」と書かれているのを読んだことがあるけど、事実かどうかわからないっす)
で、イギリスの音楽シーンと言うのは、メンバーの出自が取りざたされることもままるのです。
ワーキングクラスから出てきたバンドは暖かく迎え入れるけど、中産階級の出のバンドには「どうせお坊ちゃんたちのお遊びだろ?」という態度を取るとか。
マニックスは後者でした。
である日、彼らに好意的でないインタビュアー(日本の生ぬるいインタビューとは違い、海外はガチなジャーナリストが多いです)によるインタビューを受けている際、ギタリストであり作詞家のリッチーが、剃刀で自分の腕を傷つけ始めました。
当然、ドン引きする一同。
リッチーは自分の腕に「4 REAL(本気だよっ)」の文字を刻みつけたのでした。
パフォーマンスでそこまでするかね……という話ですよ。
その後発売された1st『ジェネレーション・テロリスト』は、まぁまぁの売り上げなのでした。(僕は好きです)(1stアルバムの前に発表したシングル『モータウン・ジャンク』のほうが好き……。https://www.youtube.com/watch?v=axAJ0RtBd7I)
しかし解散せずに、4人は活動を続けました。
2ndアルバムも、まぁまぁでしたよね……。
その後、あらゆる意味で事件としか言いようがない3rdアルバム『ホーリー・バイブル』が作られます。
曲がすんごい良い曲ばっかりなんですーーーーん
僕はダントツでこのアルバムが一番好きです、

↑ジャケットがひどすぎるぜ

で、このアルバムはメディアからもリスナーからも好意的に受け入れられたのです。
その後、アメリカツアーを開始しようとした時に、突然リッチーが失踪します。
捜索は続けられたものの、彼を見つけ出すことはできませんでした。(現在も行方不明。法的にはもう死亡扱いになっています)
残されたメンバーは、バンドの活動を継続することに決めました。
そして4thアルバム『エブリシング・マスト・ゴー』を発表。
ここで、マニックスがめちゃくちゃいいなぁーって思うのは、じめじめした、悲劇を強調する曲を作らなかったことです。
まずアルバムのタイトルが、日本語でいう所の「在庫一掃」を表す言葉ですからね。
で、曲自体がほんとーによいわけじゃないですか……。

アサヒスーパードライのCM曲として、日本でも良く流れていましたね……。
ウォール・オブ・サウンドやソウルミュージックを意識したといいます。
デビュー時には「モータウン・ジャンク」などと言って侮蔑していましたけれど、ここではそのモータウン的なアレンジの楽曲を作っているのもよいですよね。
若い時は必至で否定していたものに回帰していくところが、人としての成長を感じさせますわな……。

あと、「デザイン・フォー・ライフ」もほんとよいです……。

人生設計しよう、人生設計しよう、という日本語にするとクソダサなコーラスがさいこーです……。

こうして国民的バンドになっていったのでした。
そしてホーリー・バイブル発表から15年が経った2009年、バンドは、前作が商業的に成功したことから、リッチーが残した詩を元に新作を制作。
『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』と題されたそのアルバムですが、ホーリー・バイブルのジャケットと同じ画家を起用して……

そんなマニックス、駄作と呼ばれるようなアルバムは一枚もありません。
しかしキャリアが長いと、どうしても人それぞれの好みによって、どの時期の作品が好きかというのは別れるものだと思います。
しかし、それでも、マニックスに関しては3枚目と4枚目のクオリティが圧倒的に高い、という話にはなってきてしまうのであります。
3枚目……閉所恐怖症的と言いますが、ポストパンク的な、神経質なサウンドプロダクションと、政治的な怒りに満ちたメッセージが相まって、恐ろしいほどの気迫があると思います。後に考えてみると、リッチーという一人の青年が思い詰めていたことがよくわかる出来と言いますか。
4枚目はどことなくサウンドが親しみやすいものになり、オーケストラなんかも導入されていて、歌の内容も人々の生活に寄り添ったものになっている感じがしますね。開放的と言うか。
歌詞やフィーリング面においては4枚目の方が好きなのですけど、バンドサウンドの一つの到達点として3枚目を支持せざるを得ないんです!
それなのに、僕は、全曲再現ライブを観に行かなかった……。
つらい……。
すいすい作るのを頑張ります。

ちょっと関係のない話をしますが、マニックスは英国の「ウェールズ」という地域から出てきたバンドです。
このウェールズという土地は「歌の国」と呼ばれるほど、人々が音楽を愛好しているのだそうです。
ここから出てきたバンドは多く、バッド・フィンガー、ステレオフォニックス、フィーダー、ロストプロフェッツなどなどたくさんいます。
しかし、↑に挙げたバンドのうち、2つはメンバーが自殺(しかもバッドフィンガーは2人も)、1つは泥酔して吐しゃ物をのどに詰まらせて死亡、1つは1歳児に対する性的暴行でボーカリストが逮捕されるという……なかなかに悲劇的な顛末をたどる人たちが多いのです。なぜか。
「ウェールズっていうのはそういう国柄なんだよ」と、マニックスのメンバーは語りました。
で、僕は、マニックスのメンバーの考え方に関心があるんです。
幼少期から行動を共にしていて、バンドを一緒にやって……って、それはもう家族のような関係だったのではないかと思うのです。
そんなリッチーは、失踪してしまい、おそらくもうこの世にはいないわけです。
それでもバンドは続けると決めたわけですが、彼が詞を書いた曲を今も歌い続けています。
どんな気持ちなのだろうと。
で、あるインタビューを読んだら「モーターサークルエンプティネスのビデオを見ると懐かしい気持ちになる。日本に来た時、みんなで撮影したから」と語っていました。

リッチーがいた頃の楽曲です。
まぁ要するに、未だに後悔し続けてうじうじしているわけではない、ということですね。
思い出の中に彼がいるわけで、それは否定しようのないことだと。
エヴリシングマストゴーを出した時に、とっくに振り切っていたのだろうなぁと……。
いや、しかし、こういうバンドが国民的バンドになるのは良いですね英国。

あと、『キングスマン』という映画が今公開されているんですよ。

マシュー・ヴォーン監督のわりと久しぶりの新作ということで、大変楽しみにしていたのですが、大変楽しい映画でした!
よかったですぅー。
キックアス、Xメンファーストジェネレーションと、まぁヒーローもの二大傑作を撮った人なわけですよ。
そしてどちらも、その続編では制作指揮というポジションに回ったのですが、内容的には全作を上回らせることができず……監督業に向いている人なのだろうなぁという感じ。
どちらの映画も、青年がどのように大人になっていくか、ヒーローになっていくかを描いたものだったので、本作もその延長線上にあるかなーという気がします。

まぁ、映画の内容はちょっと置いておいて、今回良いなーって思ったのは音楽の使い方でした。
冒頭で、主人公が車を盗んで走らせているシーンで、ディジー・ラスカルの『ボンカーズ』が流れるのです。

2010年のシングルで、英国ではかなりヒットした曲なので、ストリートにたむろする若者の日常にかなりマッチしていたと思います。
ただここで、ディジーラスカルという自信が10代の頃はめちゃくちゃな不良少年で、素晴らしい音楽教師に出会うことで更生しミュージシャンになったという物語があると知って見ていると、この映画のあらすじそのものと合致していることがわかります。
偶然なのかもしれないけど、海外の映画って、音楽や映画の引用に意味があることが多いです。
この作品でも、映画の固有名詞を使ったやりとりがいくつも出てきますし。
↑の予告編でも流れますが、主人公が犬につけた「JB」という名前の由来を「ジェームズボンド? ジェイソンボーン?」とおじいちゃんが訪ねて、「ジャックバウワー」と答えるシーンがありましたし。
あれは要するに、高尚な作品とされている映画から順番に訪ねていったわけで、主人公は学のない若者なので、テレビドラマの24シリーズから撮ったと答えるわけです。
その前にも、紳士がその日ぐらしの若者を上流会に引っ張り上げるというモチーフを持つ映画をたとえに出して主人公に語り掛ける場面で、「大逆転や○○(個々の名前失念)だ。プリティウーマンは?」 と、徐々に降りていくというシーンがありましたし。(イギリスの上流階級の人たちって、映画とか文学の知識がないと一流と認められない、といういやらしい文化があると聞いたことがあります)
海外の作品の作り手って、自分たちが作っているものがどういう文脈にあるのかを強く意識している場合が多いと思います。
映画でも音楽でも。
日本の作品はその辺り、とても薄いと思います。
文化の豊饒さが羨ましいという話。
おわり。

映画を観ていて、使われている音楽が何なのかわからないと、すごく悔しいです。
音楽の引用にはちゃんと意味があるわけで、その音楽がどんなミュージシャンによってつくられたのか、どんな歌なのか、どんな時代に作られたのか、などなどがわかると、映画への理解度もぐっと上がると思うのです……。
今ちょうど、トレインスポッてぃんぐを観返しているので、なおさらそう思いました。
音楽についてもっと勉強したいです!